のづ記

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【〇〇の秋】読書篇『ふわふわのくま ポルトガル』

皆さんこんにちは、のづです。
暑さは続きますが、9月に入りましたね。「〇〇の秋」というのは多数ありますが、今回は読書の秋ということで、本の紹介をしようと思います。以前より当ブログでも紹介してきました「ふわふわのくま」シリーズから、絵本『ふわふわのくま:ポルトガル』のみを紹介する単独記事です。

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表紙絵


1,絵本シリーズ『ふわふわのくま』の魅力
今回は絵本としてのふわふわのくまに特化した記事なので、改めて『ふわふわのくま』絵本シリーズの魅力を紹介しておこうと思います。
セリフや説明書きが一切なく、謂わば言語のバリアフリー化がなされたことが最大の特徴であろう絵本シリーズです。しかし実は言語面以外にも非常にユニバーサルデザインな仕様となっています。それが、この本に登場するのがすべて白熊である点です。

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『ふわふわのくま:ポルトガル』より。

アジア圏の物語でも、欧米圏を舞台にしても登場するのはくま、くま、くま。
人種的な壁がなく、作中のくまたちはひたすらにくまで在れる、我々は容姿によるノイズがかからずに読めるという大変にストレスフリーな、ふわふわな仕上がりです。

上記のような面での特徴とともに、絵本シリーズのもう一つの大きな魅力が緻密かつ暖かなタッチで描かれる見ているだけで嬉しくなる数々の風景でしょう。

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『ふわふわのくま:なつかしいドイツの街・ツェレで遊ぶ』より。


さて、『ふわふわのくま:ポルトガル』では、これらの要素が過去最高に効果的に働き、『1000000ROSES』と並んでシリーズ最高傑作としても差し支えない出来であると考えます。*1

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現在は売り切れのため表紙画像のみの紹介

次項では、この『ふわふわのくま:ポルトガル』がどのような点で素晴らしいのかを考えてみようと思います。




2,『ふわふわのくま:ポルトガル』の魅力

(1)パステルカラーが映えるポルトガル
本作で最も目を引くのは、見開きページで描かれたこのシーンでしょう。

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直撮りなので、色味等に若干齟齬がある。

これはポルトガルのアゲタという街で開かれる「傘祭り」と呼ばれる催しで、歴史は長くないながら、その華やかさで観光スポットとして人気を博しているようです。
www.myushop.net
こうして現実のものと比べてみると、その再現度の高さに驚かされます。ヨーロッパ各地のイベントに参加なさっている作者だからなせるものでしょう。
またこのシーン以外にも本作はカラフルな町並みが描かれています。このあたりは海洋国家らしい開放感*2を感じさせてくれますね。
原田先生の絵のタッチと、パステルカラーがあふれるポルトガルの街並みの相性がとても良くマッチしているんですね。

また、風景というのは何も町並みだけではありません。『ふわふわのくま』シリーズには欠かせない食事シーンは今作も健在。
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海洋国家らしい海の幸をふんだんに使った料理の数々。その中でも異彩を放ち、一際目を引くのが画像下部の卵の乗った料理。「フランセジーニャ」と呼ばれる肉類をこれでもかとパンで挟んだあとにチーズで包み、卵を乗せ、周りにフライドポテトを配する追いカロリーっぷり。このカロリー爆弾、ポルトガルでは人気のB級グルメなのだとか。
ca-voir.com



(2)『ふわふわのくま:ポルトガル』は平成狸合戦ぽんぽこ

一見ふわふわのくまともポルトガルとも何ら関係なさそうな、タイトル自体も何の脈絡もなく言葉を並べたかのようですが、『平成狸合戦ぽんぽこ』は「滅ぶ者たち」の話です。
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『ふわふわのくま:ポルトガル』は表紙をめくるとこのような絵から始まります。
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お気づきの方もいらっしゃることでしょうが、これはポルトガルの首都リスボンにある「発見のモニュメント」と呼ばれる像をふわふわのくま化したもので、大航海時代を切り開いたエンリケ航海王子を先頭に、かつて世界を席巻したポルトガルの隆盛を賛美しています。

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Wikipediaより。

本作で描かれるポルトガルは、至極平和なヨーロッパの田舎町といった様相です。それは上でも述べた通り、穏やかな色味に溢れた素敵な姿です。
しかし本作のラストは、そのようなカラフルな世界ではなく、まだ見ぬ富を求めて夢見て帆を張り、大西洋に旅立った先人たちに思いを馳せる姿で締めくくられます。それは過去の栄光であり、遠い日の黄金時代です。これは過去に縋るという後ろ向きな現実逃避ではなく興隆も衰退も認めた上でポルトガルという国に対する大きな愛情と敬意。『ふわふわのくま:ポルトガル』には、そんな念を感じるのです。




というわけで今回は秋の夜長*3に『ふわふわのくま:ポルトガル』を読んで、遠いようで近いかもしれない異国に思いを馳せてみませんか。








ん……?









んん!?



ち、違うんだ…!!わ、私は、私はただ…!!








真面目に弁明しておくと、過去ツイを見て舞台を選んでくださったようですが、これは本当に癒着とかではない。

*1:『1000000ROSES』はシリーズ内でも異色作であり、良くも悪くも「際立つ」作りとなっている。

*2:そういえば世界史Bで習うクレタ文明の絵とかもタコとかがコミカルに描いてあって面白かったよね。

*3:どうしたわけか関東は9/1になった途端涼しくなった