みなさんこんにちは、のづです。
ブログの方では随分と間を空けてしまいました。*1取り戻すなんて意識は更々ないのですが、今月中にもう1、2本くらい記事を書けたらなぁ、なんて思っています。
さて、今回は本の紹介記事、8月14日まで東京交通会館にて開催されていました「ふわふわのくま展2022年夏」で販売された新刊
『ふわふわのくま:ウクライナ』
についてです。
「ふわふわのくま」が如何なものであるかは過去記事を参照していただければと思います。
※記事は新刊の大半の展開を包み隠さず紹介しています。いわゆる「ネタバレ」を避けたい方はご注意ください。
『ふわふわのくま:ウクライナ』
タイトルを聞き、その意図、作者原田みどり先生のメッセージが明確であることは誰の目にも明らかでしょう。様々な企業の都合や、そもそも政治的なスタンス表明を忌避する日本の傾向からか、ふわふわのくまほど明確にウクライナを応援する姿勢を示したキャラクターも国内でそういないのではない気がします。
本作もこれまでの書籍と同じく、一切の台詞やモノローグを排しています。しかしながら、こと今作においてはこの「文字がないからこそ世界中の誰もが読める本」*2であることが、これまで以上に意義をもたらしています。今起こっていることは、紛れもない現実であり、世界中の誰もが(少なくとも絵本を買える生活を送る人は)真剣に向き合うべきことなのだと、改めて思い起こされます。
物語冒頭、金色に輝く視界いっぱいの麦畑が割れて現れるくま。その忌まわしい事故で知られるチェルノブイリ原発の印象が強くなりがちですが、ウクライナは東欧屈指の穀倉地帯です。このウクライナにとって農業の豊かさは国力の根源であり、ここから生まれ出るように現れる国旗色の服を纏ったくまは「平和なウクライナ」の象徴のようでもあります。ここから彼(彼女?あるいはどちらでもない)が導くようにウクライナ巡りが始まります。
今までの作品以上に街並みを見せるシーンの連続性がなく(今までならば、同一個体のくまが街を歩き回っていることが理解できる構成だった)、現実のウクライナの状況と合わせると記録写真のスライドショー、「在りし日の思い出」を回顧しているようにも思えます。*3、物語の時間は動いておらず、牧歌的な街並み紹介は唐突に終わり、灰色に淀んだ空が覆う中で否応なしに物語が進みます。背を向け、平和だったはずのウクライナからさる人々、崩れる街並み…割れた地面に一人残されたくまの叫び。メタファーと呼ぶにはあまりにストレートですが、戯画化することも憚られる悲惨な現実は、遠く離れた我々も否応なしに知るところであります。
ことの是非、位置づけ(歴史的“意義”とやら)、それらの大局的な話では片付けられない一方的に奪われた人々の平和な日常。それだけは揺るぎなく確かなことです。
奇しくも8月、日本が戦争について最も思索を巡らすこの時期に、確かに今起こっていることに目を向ける、ウクライナやロシアを知るきっかけとして、本作を手にとって見てはいかがでしょうか。
以下のリンク先、もしくは関西圏の方は8月18日(木)から、8月21日(日)まで京都「さろん 淳平」様で開催される展覧会で購入可能です。
もちろん、シリアスじゃないふわふわした可愛いグッズも多数ありますよ!!!