のづ記

Twitterは@shin_notturiaです。本とかゲームとか怖い話とか。

新しいものに疲れてきたオタクも安心して見られる「薬屋のひとりごと」がとても良い。という話。

皆さんこんにちは、のづです。

いきなりですけど僕は4月に33歳となるオタクでして、いわゆるオタクが諸作品で得ている日常でほまず使うことも披露することもない知識というのも人並みにあると自負しております。*1

 

歳を取ると新しいものへの抵抗感が強くなり、慣れ親しんだものを繰り返し愛でるというのはよく聞く話ですね。私自身、日劇場で「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」*2を見て以来、SpotifyT.M.RevolutionSee-Saw中島美嘉を行ったり来たりしています。そんな私が最近見られているのがタイトルにも出しました「薬屋のひとりごと」なわけです。

 

コレが面白い。何が良いって面白さの中に安心感があるんですよ。「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」などのような作画100点満点!とかアクション5億点!!!とか褒めちぎるブランド牛ステーキのような作品ではなく*3店構えこそ豪奢なようで、初めて入った時からどこか懐かしさすら覚える中華料理屋のような魅力なんですね。1万円くらいしそうなステーキは美味しいでしょうけど肩肘張ってしまうし、毎日は食べられません。一方で淡麗なラーメンは毎日でも食べられる訳です。

 

で、この懐かしさすら覚える安心感はどこから来るのかというと、これは冒頭で述べたような「オタクがなぜか知っている日常で使わない知識」がトリックとして用いられることが多いのと、今日日珍しいほどのキャラ造形の二点だと思うんですね。

前者に関してはアニメ化されたエピソードの中からいくつか例を挙げれば

・蜂蜜に含まれるボツリヌス菌を幼児に与えてしまう

・粉塵爆発による火事

・ガラスの金魚鉢を介した光の収斂で金属を熱する

など、誰しもがどこかで見たことのあるタネが結構な頻度で登場します。これを以ってトリックに既視感があるので思っていたよりもアッサリと解決して退屈と思われる方もいるでしょうけれど、私くらいの年齢だとその見知ったトリックや、そのあっさり目な味付けがむしろ嬉しいなんてこともあるんですよ。目新しさや意外性は楽しいと同時にカロリーが高いんですな。

 

後者、この作品のキャラ造形に関してですが、門外漢の私が考える「乙女ゲーとはこういうものだと聞く」と想像するレベルで主人公・猫猫の造形が乙女ゲーヒロインなんです。というのも

色街で生まれ育ち、世の中のダーティーな部分も見てきており、冒頭から自身の境遇を冷めた目で見るほどの現実主義。

作中きっての美形な権力者や、皇帝の上級妃から無条件に近いレベルで溺愛される。

・その好意に対し冷淡なまでに靡かない。

・時に周りが震えてトラウマを覚えるほどの剣幕ですごむ胆力の持ち主。

・薬や毒など、自身の関心が向くものには目がなく、子供のようにはしゃいでしまう。

・普段はわざと容姿に秀でないようにしているが、実はかなりの美人。*4

などなど「多くの俗人を冷めた目で見る一段上の賢さ」がこれでもかと強調されて描かれています。こんなの、中学生くらいの頃に出会っていたら、真似をして同級生や教師の言葉を鼻で笑うアピールをするムーブをしちゃっていたであろう危険性すらありますよ。聞くところによると、アニメ好きな女子中高生を中心にヒットしているそうなので、今頃全国の給食中に恍惚とした表情で味噌汁を口にする光景が広がっているのかもしれませんね。共感性羞恥の人からしたら地獄のような光景ですね。

 

再三申し上げる通り、上で挙げたもろもろは、30代くらいになるとどこか既視感のあるもの、いわばベタな造形・トリックなわけですが、それでいい。むしろその意外性によって強く感情が引っ張られないところこそ良いのです。また、中高生らの若者世代が、これらの定番ネタに出会う機会としても非常に良いものだと思うのです。なかなか今の子はいきなり『スプリガン』や『ARMS』に手を出すとも思えませんからねぇ…その役を担ってるのは今作と『Dr.STONE』なのかもしれないですね。アレもテンポが良くて面白い。

 

 

とにかく新しさに疲れを覚えた人でも入りやすい、するするいけちゃう「薬屋のひとりごと」、気負わず見てみませんか?

 

 

 

 

男子中学生がドヤ顔で調理実習中に粉塵爆発の話をしていてほしい。

 

 

*1:自慢にはならない

*2:コレも同世代キラーな作品でしたよ。もはや実家の味

*3:薬屋のひとりごと」も十分作画が綺麗ですし、動きが少なめなのは物語の構成の話であって、動くときは結構しっかり動きます。

*4:3月までのアニメはこの話の背景あたりまで描きそうですね。