のづ記

Twitterは@shin_notturiaです。本とかゲームとか怖い話とか。

【ゲームの話?】嘘インタビュー

存在しないゲーム誌の、存在しないインタビュアーが、存在しない開発者に、存在しないゲームについてインタビューするという設定の、何一つ真実でない話を書きます。


本誌はこの作品について、野津人為(のづきよしげ)さんに独占インタビューをしました。

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「ろくろを回す人」で見つけたフリー素材

―さっそくですが、今作はどのような作品か、コンセプトをお聞かせ願えますか?
今作は発表当時から「コーエーだから作れる戦国大河」を掲げてきました。戦国時代を丸々描こうという意思表示であると同時に、弊社の集大成を感じていただけるようなマスターピースにしようという意気込みです。
―戦国時代を丸々というのはすごいですね!具体的に、今までと決定的に異なる点などはありますか?
シナリオ班には長大になることを恐れず『矛盾』を描いてほしいと伝えました。

―『矛盾』ですか

無双シリーズでは有名な武将を操り、敵軍を文字通り一騎当千の活躍で倒しますよね。

―「無双」の醍醐味ですよね。
しかし同時に作中では戦のない世を目指したりするわけです。プレイヤーが「楽しい」「気持ちいい」と感じて行うことが、同時に操作してる武将達によって否定されている矛盾した状態。
―なるほど確かに。では今作はメタ批判的な視点が入っているわけですか?
もちろん無双シリーズへの、というのありますが、もっと大きな視点も描いています。

―もっと大きなと言うと?
この矛盾は無双シリーズに限らず戦国時代そのものにも言えますよね。たとえば浅井長政お市の方の三姉妹の悲劇的な運命に心を痛めながら、合戦や武将の華々しい活躍に心躍らせますよね。

―あぁ、なるほど!
英雄たちの活躍によって引き起こされる悲劇や、怒涛のような時代に生まれたエネルギッシュな文化…今まで描いてこなかった戦国時代の多様な顔を可能な限り描きたかった。
ただただ重苦しくすればいいわけではなありませんが、爽快感はもちろん残しつつ、現実的な重厚さも描けたと思っていますよ。



―爽快感といえば今作でのアクション面でのこだわりを教えていただけますか?
武将ごとの操作感の差別化を強く意識しました。『4』で導入した神速攻撃は非常に好評だったので残そうと思っていましたが、今作はこれを忍者のみが使えるものにしました。代わって武将や傾奇者などには「一斉攻撃」を導入しました。

―『アルスラーン戦記×無双』で培ったシステムですね。
はい。またこれも単に騎馬隊突撃ができるというのではなく、たとえば真田幸村の騎馬隊突撃は速度重視の少数精鋭ですが、山県昌景だと人数が増えて面で制圧するような使い勝手の違いがあります。この辺りも自分好みの武将を見つける一つの要素にしてくれると嬉しいですね。

―通常アクションでも武将により重量感やアクションの方向性もかなり違った印象でした。
『仁王』シリーズでの武器システムでは上段、中段、下段と一つの武器系統で3つのモーションを用意していました。当たり前の話でもありますが、構え方で同じ武器でも全く違ったアクションに持っていけるというのは、我々にとって良い意味で肩の重荷が下りるような気分でした(笑)

細川忠興などは刀をアクロバティックな使い方をしていて、他の誰とも違う使い心地でした。
その通りです。細川忠興の武器は日本刀ですが、アクションに関してかなり難航した一人なんです。煮詰まっていたところで「思い切って一番オーソドックスな刀にして、使い方を全く違った印象にすれば良いんじゃないか?」となったわけです。

―『アルスラーン戦記×無双』や『仁王』など、本作はコーエー作品の総結集といった感じですね。
そう言っていただけると嬉しいです。ドラマ面だけでなくアクションでも、弊社の総力を挙げた作品と感じていただけるようマスターアップまで徹底的に作り込みます。




細川忠興の名前が出てきましたので、新武将についてお聞きします。今作は全9名の新武将が登場しましたが、選出基準などを教えて下さい。
今回は各地方から満遍なく出そうというイメージが前作を出した直後からありました。それは各地のドラマをより丁寧に描くにすることで、関が原などの全国の武将が関わる戦を今まで以上に重厚なものにできると思っていたからです。

―確かに、今作は終盤になるにつれて本当に「エモい」展開が多かったです!
各地方から最低3人参戦させることで、3人1チームで出陣するシステムも導入できました。3人のプレイアブルキャラクター(以下PC)で分散しながら戦うことが前提なので、各ステージのエリアもかなり拡張できました。このあたりもプレイをしていて触感が違っていると嬉しいですね。

―特に思い入れの強い新武将は誰でしょうか?
愛姫(めごひめ)ですね。

―その理由は?
のづ記だからですね。

―えっ?
これは、インタビューなどではなく、のづ記!!!!!
ヴォオオオおおおおお!!!!!!!!!
戦国無双に愛姫を出してくれぇっ!!!!!

―う、うわぁあああ!!

インタビュアーは思わず手元にあった竹の首飾りを投げつけた。寺生まれの先輩インタビュアーTから受け継いだ魔除けのお守りである。首飾りは吸い寄せられるように野津の喉に突き刺さった。人間のものとは思えぬ叫び声が当たりに響く。
刹那、あたりがまばゆい光に包まれた。インタビュアーは思わず身をすくめる。少しして目を開けると、そこは応接室などではなく、ススキが生える一面の野原であった。
「ぐっ…ぐげっ……」
うめき声の方を見ると、喉が裂かれふいごのような音を漏らした今にも死にそうな一匹の狸がいた。狸のそばには、血に染まった首飾りが落ちている。
インタビュアーは脚の腱が溶けたようにその場に座り込み、しばし目をぱちくりとさせて呆然とするばかりであった……







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