のづ記

Twitterは@shin_notturiaです。本とかゲームとか怖い話とか。

【ゲームの話】戦国無双5の感想など

※今回の記事はネタバレ要素を全く配慮なく晒しつつ、苦言を呈するものですのでご注意ください。

みなさんこんにちは、のづです。

こうした記事を書くのも随分間が空いてしまいましたが、今回は実際に発売された『戦国無双5』の感想でも書いていこうと思います。
発表から実際に発表されたのはいつだからもう忘れましたけど、まぁ数ヶ月前に発表され、大幅なリブートと解釈変更を取り入れた今作。実は弊ブログにおいても「こうなったらリブートせざるを得ないから難しいんじゃない?」という主旨の記事を書きましたが、まさかその「難しい」方を取るとは…
notturia.hatenablog.com
兎にも角にもコーエーの大胆な決断が注目される戦国無双5。果たしてその決断は吉と出るか凶と出るか!!




私の感想を結論から先に申し上げますと
「決して狙い悪いものではないけど、アレンジが下手すぎてノイズとなる要素が強すぎる」
というものですが、無論この評価であれど良い点などもありますので、その辺をとりあえず列挙していきましょう。
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【良い点】
・アニメタッチのグラフィック
印象をかなり引っ張った気がする。衣装のシワや輪郭線が墨で引いたような強弱がハッキリ出ているのは和のテイストとして決して悪いものではなかったと思う。でもまぁ個人的には実写的な既存路線のグラフィックを強化してほしかった。
・アクション面
今作から取り入れられた閃技は好みに合わせたカスタマイズができる(ただ4枠なので恐らく“ガチ”な組み合わせとなると代わり映えなく固定されそう)。主人公たる信長の得意武器である大太刀が今までの無双の操作感から最も離れていない面白みのないモーションであることに目を瞑れば、武器種ごとに今までより操作感の違いが強いのも良い。ただやはりモーション数が少ないので、若干の不満は残る。
せめて無双奥義くらいは固有の動きしてくれたならなぁ…

・ゲームボリューム
無双シリーズとしてはかなり短い期間をじっくり追った作品なので、今まで割愛されてきた合戦も多数。プレイアブルキャラクターも27名に加えて固有モーションを持たぬ10名と計37名、大量リストラが起こった印象ながら、実はそこそこ居る。


【悪い点】
・UI
武器強化や馬の成長にはいちいちはじめの画面まで戻る必要があり、戦闘前の準備が煩雑。何か一つ忘れると戻る必要があり、その都度状況概況を見なくてはならない。もう少し各段階からショートカットできるようにしても良かったのではないか。

・シナリオ
とにかく合わなかった。特に中盤以降、信長が苛烈に戦国の魔王然とし始めるきっかけが、金ケ崎で狙撃されて濃姫が命を落としたからというのがまぁキツい。結局裏で糸を引いていたのは幕府だったり、百地三太夫だったりなのだが、私怨で浅井朝倉連合を壊滅させ、幕府を滅ぼす織田信長…コレのどこに歴史ドラマのスケール感を感じろというのか。
本能寺の変も「乱世の業を武力で絶ち続け“魔王”となった自身こそ、最大にして最後の乱世の業」と自認した信長が、光秀に討たれることによって“天下一新”を完結させるという筋書き。はた迷惑すぎる手の込んだ自殺に矮小化しているのも、スタッフは俯瞰的な視点を持った信長ならではの奇抜かつドラマチックな展開とでも思っているのだろうか。そもそもこういう自らの悪さを自覚していて、倒されるのを望んでいた大ボスキャラ、割といる気がしない?目新しさみたいなものも感じない……2章くらいまでは良かったんだけどなぁ……




【リブート路線に関して】
有体に言えば今回の記事はこのことについて述べるためのものである。
コレはもう1作目から愛好してきたオタクの老害的な叫びだから、色々差っ引いて見てほしい。
歴史モノに触れるとき、我々がその人物を特定の人物だと認識できるのは何故か。パブリックイメージがあるからだろう。
歴史上の人物のパブリックイメージは大別して二つの要素から作られる(と私は思っている)。
1,行動(奇策で墨俣城を一夜にして建てる豊臣秀吉、本能寺で謀反を起こす明智光秀徳川家康を忍術を駆使して支える服部半蔵など)
2,容姿(豊臣秀吉には小柄でサル的な要素が多い、本多忠勝には鹿角脇立兜や袈裟懸けの数珠を取り入れたデザイン、伊達政宗の眼帯や三日月兜、小さなところでは家紋など)
の二つだ。片方さえあれば多少のオリジナル要素はキャラ立ちにつながる。容姿面のほうが多少の自由が効き、パブリックイメージの真逆で描こうとも、行動が伴えば唯一無二の人物像となる。だがその両方がないとどうなるか。名前だけ借りた「よく分からない誰か」になるのではないか。
リブートによる最大の被害者の一人、柴田勝家は特にひどい。もはやメインシナリオでの言動は奇行の範疇だ。CVは『4』までと同じく竹本英史氏であり、既存ファンはそれだけで「無双の柴田勝家」とつなげることが可能だが、それは史実の柴田勝家が持つ要素ではない。5の勝家も「瓶割柴田」「鬼柴田」と称されるにふさわしい髭面の貫禄ある面持ちだが、無造作に纏めた癖毛は武将然としたものではないのでこれもまた実在の柴田勝家と繋げるのがむずかしい。何よりも行動の支離滅裂さ。少なくとも私はお市を優先して姉川で浅井方につく人物を柴田勝家と呼びたくはない…
ノイズとなったのは勝家だけではない。直臣を「仲間」と表現し、無個性な熱血漢となった麦わらの一味みたいな羽柴秀吉、兄と呼べと言われた瞬間から、今川家に人質として入る最中の自分のことを襲撃拉致した信長を妄信的に慕うようになる徳川家康、クソほど中途半端な仕事をする雑賀孫市、そして幼稚で視野狭窄な信長…変えなくてよかったところを変えて前より酷くなった箇所が目に付き、プレイしていて終始ノイズとなったというのが正直な感想である。上記の面々の共通点としては思い当たるのは全員がメインシナリオにかかわるキャラクターであることだ。どれもこれもメインシナリオのお粗末さに引っ張られた感が否めない。

無論リブートによって良くなった点がないわけではない。
他国を蹂躙する戦国の巨人としての威厳を発揮するようになった今川義元や、荒々しく武将然とした武田信玄、徳川の年長者として引っ張るようになった服部半蔵と徳川の血気盛んな若武者に生まれ変わった本多忠勝も、これを入り口にするならば割と良い組み合わせに思う。小林親弘氏の演技も良い。ただ忠勝に関しても大塚明夫氏が声を充てることで出ていた、呼吸一つで最強の武将として納得させてしまう存在感に慣れ親しんだ身としてはやはり寂しさを覚える。



書き出していて再確認したのですが、抱いている不満点の大半は無双シリーズを以前から愛好しているが故の要素が大半であるということです。ネットの場末で無責任にくだを巻く三十路に目配せするよりも、しがらみを切り捨てて新しいものを提示する判断は、これからの15年を思えば全くもって正しい*1ものでしょう。小学生の頃から親しんできたコーエーのことを、どうなろうとも今後も応援する気持ちはあります。ただ、今後も軌道修正せず5の空気感で進むならば、私はコーエーの想定する戦国無双のユーザーてはないのでしょう。その一点にのみ、寂しさを覚えるのです。
















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俺のブログの案のほうが絶対面白い(傲慢)
notturia.hatenablog.com

*1:なら中途半端に従来のキャスティングを残して目配せするなというのは、さすがに暴論か