のづ記

Twitterは@shin_notturiaです。本とかゲームとか怖い話とか。

【禍話で語られなかった話】夢の中の現場。その後…

今回の禍話リライト(正確には禍話本編で語られていないので、このような題にしています)は「夢の中の現場」という話の続き物です。

簡単に説明しておきますと、アレは私自身の体験談でして、最近になってこの事件に関する色々なことがわかったので書き記しておこうという次第です。

 前日譚として「夢の中の現場」をお読みいただければと思います。



 

notturia.hatenablog.com

 

 

 かの職場に勤めてたから数カ月、これといって死や不吉なことを連想させるような雰囲気はやはりなかった。職場の人もみな明るく、自然と働くうちに親しくなってきた。どこにでもある職場。ただし、男はやはりあの夢を忘れられなかったし、職場が明るければ明るいほど、何かをひた隠しにしているのではという気持ちにならざるを得なかった。多忙な職場でもあったので、なかなか歓迎会なども開けずにいたが、よく話しかけてくれるフランクで口が軽い同世代の同僚が酒の席に誘ってくれた。そこで男は

「もしかしたらネットの悪質なデマかもしれないし、本当のことなら嫌な思い出かもしれないが…」と断りを入れ、思い切って事故の子細を聞いてみることにした。同僚も慣れた様子で話してくれたので、この手の質問は何度も受けていたのかもしれない。

 それによると、事故は完全な被害者、というのではなく、むしろ道路に飛び出したものであった。つまりは、自殺である。しかし、その女性は職場内でいじめ等を受けていなかったようだ。実際に警察が調べてもモラハラパワハラとの関連性は確認されず、このご時世には珍しくひっそりと報じられて終わった(もっとも、そのせいで男は知らずに勤め始めて怖い思いをしたのだが)。 では何故死んだのかというと、何かカルト的なモノに憧れを抱いており、死後の世界、あるいは死という事象そのものに強く惹きつけられていたんそうだ。彼女の自室から発見されたノートには、

『恨みや厭世的なものではなく、同僚に責任を負わせるものではない。両親より先立つこと、事故現場となってしまう職場、そこに勤める方々には大変申し訳なく思うが、死への憧れを止められない』

といった旨が書かれたものが見つかったのだそうだ。

 ここまでは「そういう動機だったのか」という話なのだが、やはりどうしようもない困窮や精神苦、もしくは大病を得たわけでもない生者が死に憧れるなどというのは健全な状態とは言い難い。死後の世界があるかは分からぬが、死を拒絶されるということがあるのかもしれない。何の事かと言うと、彼女は現世を離れようとして飛び込んだわけだが、彼女の飛び込んだ先の路面は他の場所と違う色、それも新しいものに取り替えたからではなくむしろ逆で時間が経って色が抜けてしまったかのようにクッキリ出てしまっているのだ。死を望んだ彼女の痕跡は今もくっきりと現世に残っている。

 

 

 それと、これはこの一件と関係するものなのかは分からぬが、先日終業間際で明かりを落としたオフィスの面談室に、微動だにしない女が座っているのを同僚と二人で見てしまったのだが、それが何者だったのかはいまだに分からぬままである。