のづ記

Twitterは@shin_notturiaです。本とかゲームとか怖い話とか。

拝啓,ヒプマイ女子の皆様。日本語ラップを聴いてみませんか。

こんにちは、のづです。
ヒプノシスマイク、通称「ヒプマイ」めっちゃ勢いありますね。少し前からすると声優が当たり前のようにラップしたりなんて考えられなかったので、凄いことになってるなぁとビックリしてます。
楽曲制作に呼んでいる面々も第一線で活躍する人ばかりで、コンテンツの本気度が窺えます。
さて、今回はそんなヒプマイで日本語ラップに初めて触れた、興味を持った人に、自分が好きなグループを紹介する記事です。
どうにもですます調で書くのが難しかったので、以下である調で紹介していこうと思います。







大仰なタイトルをつけたけれど、ラップが好きと言いつつ、歴も長くないし深堀りしてるわけでもない。
いま滅茶苦茶勢いのあるBAD HOPの楽曲も格好いいと思うけど、彼らの中高時代のエピソード*1はめっちゃ怖い(ただそういう人がヒップホップに出会って社会で居場所を見つけるというドラマの熱さは分かる)。
ダンジョンはスキルの高さに感嘆するけど、みんな喧嘩腰で怖い。ヒェ…!ってなる。
アトロク*2に出てくるラッパーやDJはスタジオライブで聴くと良いなと思うけど、放送後に曲を買ったのはフレンズ*3とかだ。ヒップホップですらない。

そんな程度の自分が安心して聴ける(変な言い方だ)のがRHYMESTER餓鬼レンジャーCreepy Nutsだ。
他にも日本語ラップ史的に外すことが出来ないグループやラッパーはたくさんいるが、キリがないし、多分そんなに一気に紹介しても引かれるだけなので今回はこの3グループを紹介しようと思う。

知っている人からすればド定番というか超王道、日本語ラップのスターターパックかのような組み合わせだろう。でもいいんだ。みんな超上手いから。安心して聴けるというのはトゲがないいう意味ではない。三者ともヒップホップの持つ「俗っぽさ」は全開だ。ただし、いまだに残る「ラップは不良文化」というイメージとはかけ離れた面々だと思う。
そしてこの3ユニットのもう一つの共通項は、聞き取りやすさだ。早口のラップになろうと何を言っているのか聞き取りやすい滑舌の良さ。これはそのまま押韻の妙を楽しみやすさにもつながるので、聴いていて気持ちよくなりやすい楽曲が多い。
というわけで、三者の簡単な紹介と、入り口としていいのではないかと思う曲のPVを一つずつ貼っていく。

RHYMESTER
f:id:notturia:20191022162745j:plain
日本語ラップの黎明期から第一線にいたのがRHYMESTERだ。めでたく結成30年を迎えた。韻の堅さと語彙力はいまだに他の追随を許さぬものがある。
特に2009年の活動再開後は社会風刺や人間讃歌的なポジティブなメッセージの曲も増えてきて、ヒップホップを日本に本気で根付かせようという熱意が感じられる。クレイジーケンバンドBase Ball Bearスキマスイッチ椎名林檎などJ-pop、ロックとのコラボ曲やレゲエベースの新曲など、50歳を超えても尚変化と挑戦を止めぬ姿勢が最高に格好いい。長く、彼らのツアーや主催するフェスにも使われているRHYMESTERの代表曲の一つ『人間交差点』のPVを貼るので、30年選手の力強さを見てほしい。
www.youtube.com



餓鬼レンジャー
f:id:notturia:20191022163842j:plain
ヒプマイにも楽曲提供しているので取っつきやすいかもしれない。「Xvideosでいい感じのエロ動画を見つけようとしてめっちゃ時間浪費したけど何歳になっても辞められない」というだけの内容の歌を大真面目に、韻を踏みまくりながら歌ったりする餓鬼レンジャー
気軽に楽しむ、音の気持ち良さを味わうという点で非常に優れているので、軽薄な気分で楽しみたい。そういう音楽があってもいいよね。馬鹿と天才は紙一重と言うやつかもしれない。次に紹介するCreepy Nutsとのコラボ曲『ちょっとだけバカ』でもそういうことを言っている。でも今回は彼らの技量が爆発する『The Skilled』を貼ろうと思う。PVに歌詞も出てて見やすいしね。
www.youtube.com


Creepy Nuts

f:id:notturia:20191022165717j:plain
R-指定(左)のロン毛はキムタクを意識したものらしい。正気か。
さて、今回の本題のCreepy Nuts。最近はメディア露出も増え、知名度もかなり高いだろうけど、ちょうどヒプマイの新曲制作をしたので良い足がかりだろうと思うし、何より最近一番聴いてるので、少し長めに尺を割かせてほしい。

自分がこの二人に感じる魅力はどこまでいこうと一般人っぽいところではないだろうか。

MCのR-指定はDMCというラップバトルの全国大会で3連覇を果たし、DJ松永は先日DJの世界大会で優勝を果たした「日本一のラッパーと世界一のDJコンビ」がCreepy Nutsだ。しかしこの二人がテレビに出た際や、あるいは二人で持っているラジオ番組「オールナイトニッポン0」では驚くほど「芸能人オーラ」と言われるような貫禄がない。テレビはまだしも、ラジオは皆無だ。ツイキャスの存在を知った男子中学生二人がはしゃいで配信した内輪ネタだらけの放送が「オールナイトニッポン」で、その中学生がたまたまラッパーとDJで、上の業績を持っているだけという印象なのだ(少し前の回では、ケンタッキーのツイスターは世界一美味いという話で盛り上がっていた}。

私事となるが今年のROCK  IN JAPANにおいて二人を生で見たことがある。
ロッキンで見たDJ松永は首から上と下が全く噛み合ってなくて世界大会で優勝する実力者なのに、驚くくらいオーラがなかった。R-指定もひょこっと現れて音合わせついでに持ち時間前に『数え歌』を披露してくれたが、「本番は、満を持して現れた風に出るから皆さんもそういう体で迎えて」と言いながら、真っ先に茶番に耐えられず笑い出していた。リアクションがあまりに一般人だ。無論歌いだしてからのギャップもいい。

ただギャップとは関係なしに、この一般人っぽさこそ、中高時代を日陰者で過ごしてきた彼らのパーソナリティーであり、楽曲にも色濃く表れるヒップホップだけが取り柄の野良犬根性だ。ヒップホップに対する異常な愛情を全力でぶつけつつ、ユーモアも決して欠かさない楽曲の数々。どの曲も聴きやすく、PVも笑いを取りに来ることに狂気じみた熱意を入れてくるのでどれも見ごたえがある。
今回はヒプマイから入った人にオススメするという企画のため、Creepy Nutsが楽曲提供をした「どついたれ本舗」とも共通項を多く感じられるであろう『板の上の魔物』を選んだ。ドラマ『べしゃり暮らし』への提供楽曲で、舞台に立つ芸人の覚悟を歌ったものなので、白膠木簓のサブテキスト的に聞くこともできるかもしれない。
www.youtube.com
コメント欄のツッコミから、一見カリスマ性あるアーティストのドキュメンタリーっぽいこのPVがどれだけふざけているのかを察してほしい。




というわけで聴きやすく、怖いイメージのない3つのグループを紹介しました。
他にも素敵なグループ、ラッパーはたくさんいるので、気になったところをきっかけに聴く人が増えてくれるとうれしいです。

今回重視した聞き取りやすさとはまた方向性の違う天性の歌声とリズム感と滑舌を持ち、最近はもはや独自言語のように聞こえるのがSOUL’d OUTDiggy-MO’さんも、洋楽のように聴いてるだけで気持ちいので、こちらから入るのもありかもしれません。タイアップ曲や、某氏による作品の影響もあってジョジョMADで多く使われているので、ジョジョがお好きな方はyoutubeニコニコ動画で検索してみてください。

それにしてもヒプマイはすごいですね。ラッパーたちへの敬意ある起用と、声優ファンに楽しさを分かりやすく伝えているというコンテンツそものの力は言うまでもなく、舞台化を発表した際に吹き上がった不満も、新曲などの本流コンテンツも抜かりなく充実させることで掻き消すリサーチ力とブランドの持つ勢い。
どれだけ勢いがあって拡張できようと「声優×ヒップホップ」という本流を決して蔑ろにしないこの姿勢は、大げさでなくジャンル問わず様々な企業に見習ってほしいと思いました。

*1:検索してくれたらいくらでも出てくるが、少年院送りになるようなことをしている

*2:TBSラジオの平日帯番組『after 6 junction』の略称。RHYMESTER宇多丸がパーソナリティーを務めていて、ヒップホップ特集やラッパーによるライブが多い

*3:渋谷系のお隣と言う意味で神泉系を自称するグループ。『塩と砂糖』『夜にダンス』などがお気に入り